使用ラケットのお話③

テニス
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ラケットの比重とバランス調整のお話

みなさんこんにちは。商品部 奥村です。

ここまで、ストリングのお話・グリップのお話を投稿させて頂きました。

今回は第三弾! 私が硬式テニスで使用しているラケットの【重量調整】について紹介させて頂きます。 ※ラケットのカスタマイズはこれが最終回です。

ラケットの比重って…?

ラケットの比重と聞いてピンとくる方ってなかなかいらっしゃらないと思います。

比重とは簡単にお伝えすると「同一体積における重量の比」と捉えるのがおよそ一般的です。※同一素材の比較の場合密度差とも言えます。

最近流行りの黄金スペックのラケットは重量が300gに設定されていますが、300gをラケットの全体に均一に配分している訳ではなく、ラケットの特性を出すために各メーカー細かく比重を変えながらラケットを設計しています。

一概には言えませんが、「ラケットのここの部分に比重を持たせると面が安定する。」「逆に比重を軽くするとしなるようになる」「ラケットのここの部分に比重を持たせると芯の位置が調整できる」といったような、比重調整においてある程度の規則性は存在します。

このようにラケットの設計上、比重の重い所と軽い所を巧みに組み合わせることで、他のラケットとの差別化やラケットの独自性を追求していくわけです。

スウィートエリアとスウィートスポット

ラケットには反発力がでるエリア(いわゆる芯)があり、一般には「スウィートエリア」という名称で広く浸透しています。さらに面安定性・パワー共に最高と言われる理想的な点が「スウィートスポット」であるという説があります。先のラケットの比重の話で、「ラケットのここに比重を持たせると芯の位置が調整できる」とお伝えしました。

突然ですが、テニスやバドミントンのラケットってフェースのどこで打つと一番エネルギー効率高いと思いますか?

正解はフェースのど真ん中…ではなくフェースのど真ん中より少し先端部分です(ラケットにより位置は異なります)。ここが俗にいう「スイートスポット」です。

何故、ど真ん中より少し先端に寄るのかというと…

ラケットはスイング時に、先端に近づくにつれて遠心力が増してスイングスピードが上がることが理由の一つ。もう一つの理由は「芯の融合」と言われていますが、これは後程「芯の位置の調整」と併せて詳しくお伝えします。

メーカーがスウィートエリアを真ん中から少し上にずらす工夫をしているのは、最大のエネルギー効率を求めてのことだと思います。

ヨネックスの「アイソメトリック形状」のようにフレームの形状を変えることでスウィートスポットを上に拡張するパターン、ヘッドの「グラフィンテクノロジー(極バランス)」のように先端に比重を大きく設計するパターン。等々。。 メーカーによって設計コンセプトは千差万別なので、各メーカーの創意工夫を汲み取るのも面白いですね!

これはどうでもいい超余談なんですが、トップスピンとスライスを打つ場合でも最適なフェースの打点って変わってくるんです。ラケットはボールと接触する際に打点が上下にずれると、衝撃でフェースが微妙に被ったり開いたりします。トップスピンを打つときはフェースが開かないように打点を下に下げ、スライスを打つ時はフェースが閉じないように打点を上にあげると回転量が増えます。掛けたい回転によって打点を調整できるようになるとテニスの考え方変わってくると思いますので是非意識してみてください。

ゴルフをされている方はアイアンでドローとフェードを打ち分ける際の打点の相違によるフェースの動きをイメージして頂くとわかりやすいかもしれません。※アイアンはフェースが直面なので、インパクト時にラケットのフェースと近い動きをします。※ウッドはフェースが曲面なのでギア効果が関わってくる為全然話が違ってきます。

すいません。完全に話が脱線しました。クソどうでもいいですよね。。失礼しました。。

ラケットの芯は1つではない…?

先ほど「芯の融合」という話をしましたが、融合というくらいなのでラケットの芯って実は一つではないんです。ラケットには3つの芯が存在すると言われています。

①スウィートエリア…いわゆるストリング(面)の中心に比較的広範囲に反発力が面が安定するゾーンが広がっている。フレーム形状でスウィートエリアの範囲も決まります。

②撃心…フレームの根本側に存在しており、実はものすごく反発力のあるエリア。撃心の位置もスウィートエリア同様にフレーム形状で決定すると言われています。

③節…フレーム先端側に存在しており、オフセンターだがフレームがブレず面が安定する打点。ラケット設計の比重によって「節」の位置は変わります。

ラケットの比重を調整すると「節」の位置(先端側の打点で安定する位置)が変わってきます。

先ほど、一番エネルギー効率の高い打点(スウィートスポット)は「ど真ん中より少し先端部分」とお伝えしました。

この一番エネルギー効率が高い打点(スウィートスポット)に、①のスウィートエリアと③の節が重なり合うようになるのが理想です。そのために鉛を貼ってラケットの比重を調整し「節」の位置を調整します。

実際の芯の位置の調整

では実際に「節」の位置を調整すべくカスタマイズしていきますが、僕のような素人レベルだと使うモノは

リードテープ(鉛)

以上です。使うもの自体は超シンプルで、プロ選手も超上位のシグネチャーモデルを手にしている選手以外は、プロストックモデルに鉛の貼り付けやシリコンの注入で調整をしています。

ただし、簡単に調整とは言ってもこのスイートスポットの位置は目に見えないので、明確な正解はありません(下手にやると逆に悪化します)。打ちながら都度微調整を重ねてフィーリングを追求する地道な作業が必要です。。

それでは僕が今のラケットでフィーリングがあっている調整を紹介していきます。

ラケットは HEAD グラフィンタッチ スピードMP LIMITED EDITION です。

フェイスの付け根の部分に左右4gずつ合計8g

ここのスロート付近の部分が、実はラケットを設計する上でものすごく重要なんです。近年はパワー・スピードテニスが時流で、ラケットに求められる性能はズバリ「パワーは重いモデル同等だけど軽量化されて操作しやすいモノ」です。

ヘッドの「グラフィン」は重量を増やさずに極バランス(重量を先端と手元に限界まで分配)にすることでパワーを上げるコンセプトでしたが、スロート付近にかかる負荷も同時に増大しました。そこでパワーに対抗すべくスロート付近に比重は軽いが強度の高い素材として採用されました。

設計上当然なんですが、近年のラケットはスロート付近の強度が高い代わりに比重を落としたモデルが多くなってきています。

結果どうなるかというと、比重の重い先端側に「節」が引っ張られていきますので、スウィートエリアと節の位置はどんどん離れていくんですね。

そこでスロートの位置に鉛を貼ってスロート付近の比重を重くすることで、「節」の位置をスウィートエリアに近づけて一番おいしいスウィートスポットになるという理屈です。

この位置に比重を置くとラケットの面ブレを起こしにくくスイートスポットを外した際のリカバリー力が向上するとも言われています。

フェイスの横幅が一番広い位置に左右2gずつ合計4g

この位置の比重を重くすると、スイング時フェイス面の慣性モーメントが上がって当たり負けしにくくなります。ラケットの形状にもよりますが、ここに比重を置きすぎると「節」の位置が先端側に固定されますので、慣性モーメントが増えるからといってここに鉛を貼りまくれば良いというものではありません。

よくリードテープをラケットの先端にビッシリ貼っている方がいらっしゃいますが、ただでさえ比重の重い先端部分により比重が寄りますので、ものすごくアンバランスな仕上がりになることがほとんどです。トップヘビーに調整したい場合はフェイスの横幅が一番広い位置に貼るだけで十分な効果がありますのでこちらをオススメいたします。

まとめ

ラケットのバランス調整は、ラケットの操作性(振りやすさ)に関わる調整という認識がほとんどです。ただし実際にはものすごく奥が深くて、比重をかける位置をコントロールしてあげると、ラケットの慣性モーメントやスウィートスポットの位置を調整できるんです。

もちろん、バランスポイントはラケットの振りやすさの指標としてわかりやすい数値ですが、バランスポイントが同じでもラケットのどこに比重があるのかを理解することがものすごく大切です。

ラケットの世界って、こだわりだすとメチャクチャ奥が深いんです!

ラケットにこだわりのある方は是非カスタマイズしてみてはいかがでしょうか?

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